2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『群青の杯を掲げ』上村渉

じつをいうと、この人のデビュー作品というのは、新人賞作品としてはたぶん唯一2回読んだ作品。二作目もそんなに悪くない作品だった記憶だが、これは正直退屈。とくに前半部分。 後半部分の厚木街道を静岡に向かって歩く部分は、私自身馴染みのある道路であ…

『拍動』シリン・ネザマフィ

最後にいたってはベタな内容という感想が起きるかもしれないが、面白く読めたのだから仕方がない。とくに、交通事故に遭った人の親族のうちの、故郷からやってくるひとびと、妹と男二人の様子が面白い。彼らと主人公との間に起こる緊張関係が、この先どうな…

『文學界』 2010.6 読切作品

さいきん心が荒み気味の理由を今日も挙げてみるなら、文芸誌の7月号のラインナップの薄さ。連載しか楽しみがない感じです。 とくに『文學界』は、またハルキですか、とそれだけでなく、ひとつも読もうという気も起きない読み切りばかりか、読み切り作品には…

『市民薄暮』諏訪哲史

新潮で書いている作品は、いつも何かこれまでと違うことをやろうとしていて、それだけで好感もてる。面白い面白くないというレベルで、成功しているとは言いがたいときもあるのだけれども。 書くという行為、作者という存在。それらを当然のものとして受け入…

『乙女の密告』赤染晶子

正直読解力に欠ける私には、この作品の良さが掴みにくい。若い女性が群がって行動しのけ者を作り出したりする様は、読んでいて面白かったが、昨日まで親しくしていた人が裏切るというファシズムの状況と、重なる部分が全くないとは言えないものの、うまくこ…

『文學アジア 第一回都市篇』

なんでここに島田雅彦なの?、と金井美恵子さんは編集者に疑問を投げつけたりはしなかったのだろうか。でも、少なくとも韓国作品よりは面白かった。あーあ日本終わっちゃったぜとただ嘆いているだけ、と言われればそうかもしれないけど、かつてを良く知るこ…

『新潮』 2010.6 読切作品

さいきん心が荒み気味の理由のひとつに、真夏が近づいていることが挙げられます。 ただただ暑いのが嫌だというのが、一番の嫌であることに違いはないのですが、花火大会だの盆踊りだの、クリスマスのように毎年やってくる行事もさいきんは嫌で仕方がありませ…

『塗っていこうぜ』広小路尚祈

元不良とは思えないような調子よさげでどこか楽天的な人物の感じは、この人のもはや作風というか、いつもの感じがにじみ出る。いま描かれる衰退する地方の暗さが、ひょっとすると中央から地方をみたものであるかもしれず、こういう明るさもありかと思う。 い…

『黒うさぎたちのソウル』木村紅美

普天間問題の「最終決着」が5月といわれるなかで、なんともタイムリーな小説だったな、という印象。題名みたときは半島の話かと思ったが。 沖縄と奄美のあいだで、ともに相手を下とみるような意識があり、ときに近代日本が後ろ盾になっていたりする様は、読…

『来福の家』温又柔

漢字というものがある程度まで共有されながら、しかしその発音がそれぞれの国でまるで違う。また、簡体字の大陸と、昔ながらの旧漢字の台湾、両者の中間のような日本の漢字の違い。たしかに、それらの現象は面白いのだが、この作品の読後に感じるのは、その…

『すばる』 2010.6 読切作品

大会前の数試合で確実に3試合で帰ってくると思わせたチームが決勝進出で盛り上がっているようですが、偶々みていた情報系の番組で、あまり関心のないふうの言動をした出演者をなじるように詰問した司会者の声の大きさが、自らの意識以上ではないかと思える…

『後悔さきにたたず』野水陽介

この評価はさすがに「大盤振る舞い」かもしれない、と半分くらい思っているが、それなりの意義ある小説とは思う。それについてはおいおい。 文章のひとつひとつは悪いとは思えない。それどころか、ときにリズミカルな表現なども見られ、退屈もしない。だから…

『朝が止まる』淺川継太

文學界の新人賞についてあれだけ書いておきながら、またこの評価だが、私の場合は「大盤振る舞い」の気分は全くない。じつに楽しませてもらったし、作者は「(読者が)無事にすまないように」と書いているのだが、この作品は突き刺さった。記憶にも残るだろ…

『群像』 2010.6 新人賞2作

ここ何大会か、それが記憶にないくらい見ていないサッカーのWC(←トイレじゃないですよ)ですが、先日たまたまスペインとどこかの試合を見ました。 ただし見たといってもハーフだけですが、見ながら、なぜにサッカーは面白くないのか漫然と考えていまして…

『自由高さH』穂田川洋山

私などがここで激賞してしまうともしかしたら却って作者の方にとっては迷惑かもしれない。このブログに馴染んでいる人でそう思っている人もいるだろうし、自分でも分かっているのだが、この作品を前にしては、困った。良い事しか書けない。 作品としては一年…

『乾燥腕』鶴川健吉

小説としていえば、どちらかといえばツライというか、読み進めることがそれほど苦ではないにしても、読みながら面白いという感じが訪れることが少なかった。何といえばいいのか、「動き」が無さ過ぎるといったらいいのだろうか。いくら話しに動きがなかろう…

『文學界』 2010.6 新人賞2作

以前住んでいた街を偶然通りかかったので、ゆっくりバイクで流してみたんですが、何度か訪れた事のあるスパゲティ屋が跡形も無くただの民家になっていて少し淋しかったです。店主が病気とか、たんにやる気をなくしたとかそういう可能性だって充分考えられる…

『関誠』松波太郎

『なずな』が連載終了したら買うのを止めようかなと感じていた矢先に矢作俊彦が連載しだした「すばる」。つまり、それくらい”これだ求めていたのは”という読切がなかったわけだが、これは面白かったな。久々に小説読んでて、吹き出した。吹き出すまでしたの…

『すばる』 2010.6 面白い作品

ついにというか予想通りの時期にというか、辞めましたね。 解散ではなく辞任でしたが、あれだけ獲得した議席を間違いなく失うような事なんて期待できる筈がありません。民主党に投票したのが悪いわけで、いくら後悔しようが参議院の選挙で別の政党に投票する…