『黒うさぎたちのソウル』木村紅美

普天間問題の「最終決着」が5月といわれるなかで、なんともタイムリーな小説だったな、という印象。題名みたときは半島の話かと思ったが。
沖縄と奄美のあいだで、ともに相手を下とみるような意識があり、ときに近代日本が後ろ盾になっていたりする様は、読んでいてなるほどと思わせ、読んだ甲斐が無かったなどとは全くいえない。が、しかし最後には音楽の力で予定調和にハッピーとなるストーリーそのものの面白く無さにはやはり負ける。
あともうひとつ。ビリーホリディにも言及されたりするが、ブルースはレゲエなどと一緒で民謡のようなエスニックなものとは程遠いもの。近代によってエスニシティと切れているからこそ、クラプトンやキースリチャーズなどの白人連中までが夢中になり、ひいてはワールドワイドな音楽になった。ブルースは、アフリカ黒人ではなく、あくまでアメリカの黒人の音楽という所に最大の意味があって、ぶっちゃけ、民謡なんてものはどうでも良いと思ってる私には最後までこの小説には乗れない理由があるのだ。