『塗っていこうぜ』広小路尚祈

元不良とは思えないような調子よさげでどこか楽天的な人物の感じは、この人のもはや作風というか、いつもの感じがにじみ出る。いま描かれる衰退する地方の暗さが、ひょっとすると中央から地方をみたものであるかもしれず、こういう明るさもありかと思う。
いやそれ以上に、分かりやすい、さしたる軋轢もなく衰退していくところに、現代的なものがあるのかもしれない。しかし、例えば農業とか特定のテーマが無いとなれば、これを積極的に読もうとも思えないんだよなあ。難しい。たしかに地方は退屈だ。でもふたたび退屈するために本を読むわけではない。