2010-06-27から1日間の記事一覧

『塗っていこうぜ』広小路尚祈

元不良とは思えないような調子よさげでどこか楽天的な人物の感じは、この人のもはや作風というか、いつもの感じがにじみ出る。いま描かれる衰退する地方の暗さが、ひょっとすると中央から地方をみたものであるかもしれず、こういう明るさもありかと思う。 い…

『黒うさぎたちのソウル』木村紅美

普天間問題の「最終決着」が5月といわれるなかで、なんともタイムリーな小説だったな、という印象。題名みたときは半島の話かと思ったが。 沖縄と奄美のあいだで、ともに相手を下とみるような意識があり、ときに近代日本が後ろ盾になっていたりする様は、読…

『来福の家』温又柔

漢字というものがある程度まで共有されながら、しかしその発音がそれぞれの国でまるで違う。また、簡体字の大陸と、昔ながらの旧漢字の台湾、両者の中間のような日本の漢字の違い。たしかに、それらの現象は面白いのだが、この作品の読後に感じるのは、その…

『すばる』 2010.6 読切作品

大会前の数試合で確実に3試合で帰ってくると思わせたチームが決勝進出で盛り上がっているようですが、偶々みていた情報系の番組で、あまり関心のないふうの言動をした出演者をなじるように詰問した司会者の声の大きさが、自らの意識以上ではないかと思える…