2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『さしあたってとりあえず寂しげ』佐飛通俊

もう若くない、ひとり身の女性の話で、無理もないなと思うけれど、最近本当にこういうの多いんじゃないだろうか。世を映す鏡なんだよな、やっぱ小説は。主人公の内省の部分はそれほど違和がなく、クリーニング屋で男と知り合いその後起きた顛末も面白い。漠…

『オオクニヌシたち』三輪太郎

さいきんこの人はこんなんばっか書いているなあ。ぜんぜん面白くないとまでは言わないが、アメリカが日本を助けたのは、当初の理想が後退してからはずっとたんに赤化という波への防波堤でしかなく、神話と符合しているとか言われてもなあ。白けるだけだよ。

『人生ゲーム』綿矢りさ

同級生3人が子供の頃に遊んだ人生ゲームの悪い目の結果が大人になってことごとく実現してしまう。で、その人生ゲームに手を加えた人物がいたことを思い出し、彼の消息を知ろうとする・・・・・・。といったあからさまに作り話的な非リアリズム小説なんだが、感動…

『屋根屋』村田喜代子

この人はおなかの中の子供がしゃべったりするようなものより、こういうリアリズムのほうが断然いいんじゃないかな。しかも主人公が作家本人に近い年齢・性別っぽく、それが尚更一人称の文章を生き生きさせているような。というわけで、前半は非常に面白く読…

『群像』 2012.8 読切作品

唐突かもしれませんが、いや、あまり唐突ではないかもしれませんが、当ブログ本日をもって暫く多分、ほぼ休止状態になると思います。あいまいな言い方ですが、要するにどうなるか分かりませんので。更新頻度減って続くのか、減るうちどうでも良くなったりす…

『娘のくれた「肩たたき券」』坂口恭平

エッセイなんだが、一部しか読んでいないので(掛け値なしにマジで)、評価省略。 なんでも、東日本に住む人々全員に避難を呼びかけ、故郷熊本に戻り私設公民館に100人避難させたらしいんだが、いまこのころになってまでそんなことを得々として語るこの恐…

『最終回』最果タヒ

昔だったら、とくに2年以上前だったらもっと評価したと思うんだけれど、もうなんかこういう、面倒くさい読みを必要とする割にはたいしたことを書いていないように思える小説は、受け付けないときがある。現実と虚構についての考えで、なるほどと思わせると…

『錵(にえ)』藤沢周

あちこちで人員整理があって、日経などその手のニュースを見ないという日はないというくらいの昨今だから、平日の図書館にはこういう鬱屈した男が昔よりけっこう居るんだろうなあ、と思う。ただでさえ、団塊退職者がどっと出てきているのに。けっこうリアル…

『地蔵丸』古井由吉

今回は子供の泣き声がどこかからする、という空耳もの。でもいかにも古井氏らしい情景描写のほうにやはり惹かれる。「人は追いつめられて、姿ばかりになることがある。」と後半にあるが、これは、名文であり、名言だなあ。

『美味しいシャワーヘッド』舞城王太郎

こないだの芥川賞はけっこう可能性ありと踏んでいたのに、けっこう早々と脱落状態で、たぶん選考委員のみんな受け止め方が分からないんじゃないかと思ってるのだが、どうなんだろう。もしかしたら、書かれている出来事や思弁の意味内容にばかり比重がいって…

『新潮』 2012.8 読切作品ほか色々

20年以上ぶりくらいに青キップ切られました。しかも相手は電動補助つき自転車で警ら中という間抜けさのオマケつきです。 いやはや相手が自転車なら逃げちゃえばいいんですが。じっさい気づかないふりして逃げたことありますし(軽微な違反はナンバーなどか…

《特集 5篇のデビュー小説》

『息切れ』久保田智子・・・面白くないコメディ。とくに感想書くまでもなく。 『朝がある』柴幸男・・・工夫して書いているけどただ分かりにくいだけ。ふつうのもの書いてそこそこ読ませられるものを書ける(と感じさせる)人がする工夫なら許せるんだけど。…

『人は皆一人で生まれ一人で死んでいく』木下古栗

今作も無論傑作で、後半の怒涛ともいえる言葉の渦を読んでいると、自分が日々浴びている情報を取捨選択し整理整頓しているという正常さに、なんかもやもやした気分の悪さすら感じる。だが、気になるのは、いままで徹底して無意味に笑いのみ追及してきたのが…

『おはなしして子ちゃん』藤野可織

この人らしい、というかひとつのポリシーのような非リアリズムな現象をメインにしつつ、今回は、父母と没交渉気味な女の子が、みんなしてイジメていた子にある日復讐され、それを期に自らの傷を見出すという、昨今イジメ問題が騒ぎとなったが、そういう現代…

『もし、世界がうすいピンクいろだったら』墨谷渉

力作だなあ。ついにここまで来てしまったか。ただのマゾ男、あるいは数値こだわり男を書くだけの作家とか思っていた私はなんと見る目がないのだろう。今作であきらかに一段一つうえのレベルに到達してしまった。 物語は中堅機械メーカーの中間管理職の男なの…

『三姉妹』福永信

戯曲の体裁で誰かがつぶやいているのだが、その本文は抽象的で何を書いているのかすぐには分からず、核心のまわりをただようような感じなのに、より小さい文字で「今回のあらすじ」が載せられていて、これと合わせて本文を読むと辛うじて書いていることがや…

『大盗庶幾』筒井康隆

戦前、というか大正のころ、つまり日本の近代文化が花開いた頃の、華族出身でオモテの顔はサーカス団員(団長?)じつは裏の顔は盗賊という人の話。何が面白みなのかさっぱり分からず。

『群像』 2012.7 読切作品

パリーグよりセリーグの方が圧倒的にノーヒットノーラン(や完全試合)が出やすいということに気づいたのはつい最近です。 節電したから余裕があったのに再稼動必要なかったとか言う人って、たぶん戦時中とかだったら、われわれ国民一人一人がもっと我慢すれ…

『正直な子ども』山崎ナオコーラ

小学生モノ。ナオコーラ読んで面白かったというと相当昔になってしまったりするのだが、これは読んで単純に受け取れて単純に面白い。この作家は、へんに「深い」ものを書こうとするとイマイチだったりするから、こういうのが・・・・・・、とつい言いたくなるが、…

『骨』井上荒野

男子中学生もの。上記ほど予想内ではないが、幼馴染の関係が年齢と共にあっけなく変質したり、理不尽な暴力をふるったほうがあとで心理的に守勢にたたされてしまうというのは、物語としてありがちで、ではありがちではない所はというと、コンビニ解雇された…

『小太郎の義憤』玄侑宗久

父親を震災で失った母子を描いたヒューマンな震災もの。と書いて連想できるものがそのまんま載っているだけなので、まだ読んでいない人も読む必要はない。

『電気作家(前編)』荻野アンナ

前編で感想書くのはあれだが、後編についていつ書けるか分からんので、というか前編ですでに傑作なので書かざるをえない。くしくも笙野頼子と前後することになったが、同じように通例より大分ヒネった私小説ともいえる両作品をくらべ、言語力というか訳の分…

『猫キャンパス荒神』笙野頼子

はっきり言ってこの訳の分からなさは圧倒的だ。台所神だか何だか知らんが、学が浅いのでどこまで実際にある神話をベースにしているのかさっぱり分からんが、その神さまが自らのもとに来ることになった由来が、誰々神から誰々神が生まれ、あそこに派遣されて…

『すばる』 2012.4 読切作品

チキンクリスプ、二週間で飽きました。 先日の話の続きですが、産業界あげて再生可能エネルギーの開発に取り組めば、それが新たな成長分野となって景気も浮揚する、みたいな言い方もされますが、それに対して、イイ話ばっかりして大衆をダマそうとしてない?…

第25回三島由紀夫賞発表

あまりふだん文学賞についてあれこれ書いたりしないのだけれど、今回の柴崎友香だけは相手が悪すぎたように思う。「私のいない高校」は事件的に傑作すぎる。芥川賞と差別化したいのかどうかしらんが、他の年の受賞作と柴崎作品を比べても、2作受賞でよかっ…

『未来の読者へ――「子ども」の小説と「原発」の小説を書いて』高橋源一郎×川上弘美

このお題目で対談して、高橋源一郎が「9・11と3・11は大きかった」といったのをうけて、川上が「私はサリン事件かな」と返したところ、この空気の読めなさがすごい好きだ。川上弘美は小説家だな、と思ったのであった。高橋はやはりただの近代文学=国…

『枝豆』橋本治

「草食系男子」についてモニターされる学生のはなしなのだが、その「草食系男子」というコトバがなぜに言われるようになったか、色々考えさせるという意味では少し面白かったな。たしかに、体毛濃くていつも汗かいていて近眼でデブな男性がいくら女性に消極…

『強震モニタ走馬燈・葬式とオーロラ(短篇二作)』絲山秋子

強震モニタ走馬燈・・・震災と前後して離婚した女性とその幼馴染のはなし。その離婚した女性は、何かが壊れてしまったかのように「強震モニタ」という日本列島の揺れをリアルタイムに色で表示するサイトばかり見ている。で、いつかまた同じことが、あるいは…

『火山のふもとで』松家仁之

新人でこの長さ。新人というからには、新機軸な試みをしているかもしれなくて、そういえば題名もあまりリアリズムっぽくない・・・・・・。読み通すの辛いかなと思ったら、なんてことはない、むしろ恐ろしくアナクロな小説でありました。新しさみたいなところは皆…

『新潮』 2012.7 読切作品ほか色々

本木雅弘(字あってるかな?元渋柿隊)とデートする夢を見ました。 なんですか民主党が原発を2030年までにゼロにすると言っているらしいですが、実現不可能なことをマニフェストに掲げて政権とって、そのことがさんざん批判されているのに、まさかこの件…