『三姉妹』福永信

戯曲の体裁で誰かがつぶやいているのだが、その本文は抽象的で何を書いているのかすぐには分からず、核心のまわりをただようような感じなのに、より小さい文字で「今回のあらすじ」が載せられていて、これと合わせて本文を読むと辛うじて書いていることがやや分かってくる。作品の背景とか筋がないとさっぱり分からぬ歌舞伎とかの古典芸能みたいなものか。しかし、このあらすじが妙にビシっとした文章で出来事を詳しく追っていて、本文のセリフの曖昧模糊とのギャップが楽しめるというか、なんでこのあらすじでこんなことぶつぶつつぶやいているんだろうという。なんともヘンテコで、人を喰った、かつ凝った作品。つぶやきが、段落ごと(一拍おくごと)になぜか類義語で文末と先頭が重ねられている意味のなさもおもしろい。なんだこりゃ。