『さしあたってとりあえず寂しげ』佐飛通俊

もう若くない、ひとり身の女性の話で、無理もないなと思うけれど、最近本当にこういうの多いんじゃないだろうか。世を映す鏡なんだよな、やっぱ小説は。主人公の内省の部分はそれほど違和がなく、クリーニング屋で男と知り合いその後起きた顛末も面白い。漠然と会いに行った筈なのに、実際にあうと振り返らず逃げ出してしまう、とか特に。
その一方で、女子アナが出てきたりするものの、その人生に寸分も興味がもてず、しかもいまどきの報道魂云々言われてもな。
あとラストが変でこれが全体の印象を台無しにしてしまっている。あたかも世界の最初の目覚めのように、という地点に主人公は到達したのだが、「あたかも」というのは、例えたいした変化がなくても初めてのようにということに相違あるまい。それなのに、主人公が、実際においてまで新天地を目指すというのが何とも唐突で結語としてすごくちぐはぐした感じだ。