『文學アジア 第一回都市篇』

なんでここに島田雅彦なの?、と金井美恵子さんは編集者に疑問を投げつけたりはしなかったのだろうか。でも、少なくとも韓国作品よりは面白かった。あーあ日本終わっちゃったぜとただ嘆いているだけ、と言われればそうかもしれないけど、かつてを良く知るこの世代ならではのものかもしれないけど、メードインジャパンは・・・とかときどき面白い記述があるし、それだけでなく今回は、この人ならではの真面目さが顔を出している。つまりはそれくらい今は深刻なんだろう。
韓国作品はまとめて書くけど、どちらも退屈。ナイフと水を象徴的に扱ったいかにも純文学な退屈さ。長く感じた。
いちばん面白かったのは『香草営』。訳分からない自分勝手な人が出てくる。先入観入り混じりかもしれないけど、いかにも中国らしくもあり、むかしの近代小説らしくもあり。いちばん昔の近代小説らしいのは最後の中国作品か。短くまとまっているのがいいね。
さて柴崎友香。ひとの領収書をネコババするところで読む気の半分を無くす。この内輪の関係を優先する倫理感覚の無さ。いっけん誰とでも仲良くやっているような開かれた人間を描いているようでいて、中年男性はいくら困っていても外側でしかない。こういう集まり=共同体好きな人達には例えば今なら「日本代表たまけり団」みたいなうってつけの存在があるんだから、文学も、それどころか紙もペンも必要ない。と、こういう作家も居ていいんだが、毒づきたくなる。