『屋根裏プラハ』田中長徳

前にどこかで東ドイツのルポも読んだし、ドキュメンタリも見たことがあるが、旧共産圏で「昔の方が良かった」というのは、よく言われる事らしい。プラハでもやはりそうらしい。
しかしそれに対して、同じ体制になって愚痴が言い合えるんだから苦しんでるのは一緒、あの密告社会よりはマシだろう、というのは何とも呑気というか。「同じ苦しみ」のように見えて、いまだ、旧共産圏と先進各国では生活のレベルは違うのではないのか?
しかも西側先進国は、旧共産圏と異なり、今は世界不況の只中だが、それまでのあいだ豊かな時代を経験してきているのだ。そこが、せっかく西側の仲間入りをしたと思ったら西側も不況の真っ只中という、負→負の連続となってしまい、良い思いをした時期が短く終わってしまった旧共産圏と違うところ。
要するに、彼らが「昔が良かった」というとき、どういう事が起こっているのかというと、我々の体制に対する厳しい批判がそこでなされているのだ。それを、やっと君らも仲間だね、って、なんか変だよそれ。