『老人賭博』松尾スズキ

たんなるドタバタ劇の印象で、ごくごく一部を除いて、この作品が小説であるべき理由が私には全く見出せない。いいかえれば、松尾が主宰する劇団の演劇作品のノベライズということ以上の意味を見出せなかった。人物が皆あまりに深みや複雑さに欠けるし、登場人物が皆こんな薄っぺらであれば、そこに深みや複雑さに対する批評性を見出すのも難しい。松尾がメディアでもてはやされて暫く経つせいか、もはや新鮮味すら欠いたおかしさの演出に白ける場面も多い。
ごく一部と書いたが、それは後半での長い台詞の書き直し版とそれ以前を比べるところで、こういう所は文字の方がわかり易いだろう。


あとは7月号で書きそびれていた分。