『海近しの眩しい陽射しが』川崎徹

あのCMディレクターの人の小説で、読んだのは初めて。
この作品について何を書けばいいのか迷ってしまうくらい凡庸な作品。時の前後が多少分かりにくかったほかは、さしたる瑕疵もないのだが、少しも面白くはない。ストイックさを感じるところはあって、文章的に過剰さを取り除こうという部分もあるのかもしれないが、かといって選び抜かれ推敲されつくした切れ、鋭さなどを感じるところもない。
内容的には死をめぐる話なのだが、題名の眩しい陽射しがあまり感じられなくて、どちらかといえば、生きている人の思いと交錯するのは、ナメクジや蛾の訪れである。
これならその後に辻井喬の方が似たような淡々としたリアリズムものでもまだ読ませる。
バブル期に絶頂であったという共通点はあるけれども、辻井氏の名前が浮かんでしまったのは、たまたまそのすぐ後に作品が載っていたからなのだが。
今後もこのような作品ばかりであるのならば、川崎氏の作品に目を通すことはまず無いだろう。
とにかく書きたいことが何もない。