『勝手にふるえてろ』綿矢りさ

元オタクというちょっとイタイ女性が二人の男性の間で揺れるはなしで、それほど凝った作りではない。
その主人公女性が、昔の男性に会うために同級生の名前をかたって同窓会を催したりするのだが、こういうタイプのひとがそんな行動力あるものなのか、ということにちょっと疑問を感じたものの、私には実際のところよく分からない。ぎりぎりリアリズムの範囲内だろうか。
好きだった昔の男性とにくらべ、理想とは違う男性は凡庸かつ鈍感で、それにたいするツッコミがなかなか面白かった。であっても、主人公女性のような女性にとっては好きになってくれるだけでやはり何がしかの存在となっていくわけで、つまりはこの女性も凡庸の一種なのだ。この凡庸男性が名前を獲得していくかのごとく彼なりの個性を出してくる所までは至らないのだが、彼女が凡庸に妥協していくあたりは説得力はある。ラスト近く男性がなんか叫んだりするのはドラマめいてるというか別の意味で凡庸で、なんか嫌なんだが。
また、在りし日の憧れていた男性とのエピソードがしっかり作られていて、なかなか心に残る。運動会の閉会式のときに「自分を見て」と言われたエピソードには感心した。