『スーパーヒロイン』長島友里枝

『群像』最新号より。まず最初に言っておかねばならないのは、小説としての巧拙いぜんにこの書くものは私は好きだという事。つまり三島賞の選評で長島作品を酷評した、たとえば町田康の書く小説とどちらが優れているかはともかくも、どっちが好きかと言えば長島作品だということ。どっちを買うか選べと言われたら迷うが、文芸誌に名前が載っていてどちらが嬉しいかといえば長島のほうだ。
題名ともなっているスーパーヒロインは主人公ではないのだが、その彼女がなんとも魅力的で、魅力的な人物に出会えることが小説の楽しみの一つだとすれば、この小説は小説足りえる理由を間違いなくひとつは確実に持っている。そして、そういうふうに魅力を感じさせることが出来るということは、作家として充分に力を持っているということではないか。バレエに殆ど興味がなく、注釈もないバレエ用語が頻発しながらそれが具体的にどういう動作を指すのか全く知ろうともせずに読んだが、それでも伝わるものがあるというのはすごい事である。
写真家であるからこういう眼を獲得したのか、あるいはそういう眼を有していたから写真家として成功したのか、それは分からない。ただ、長島氏の小説を読むにつけ、きっと写真家としても優れていて、被写体の魅力を見出す能力に長けているんだろうなあ、と想像するし、それはきっと間違っていないだろう。ただし私は芸術としての写真にさしたる興味はない。
100点満点と絶賛できないのは、主人公が見るだけの人になってしまっていること。惜しい。