『たそがれ』島本理生

子供が生まれて激変した私、とまめてしまうと身も蓋もないが、母子二人きりで密室にあることが、息を詰まらせるものではなく、まったく逆で、主人公にとっては幸福という形容では足りないくらいのものである、というのが興味深い。つみあげてきた近代的自我があっけなく相対化されるときが、そういえば女性にとってはあるのだななどと思ったりもした。