『ミステリオーソ』松浦寿輝

ジャズをあまり知らない人が読んで面白いかなこれ、とも思うが、あのモンクだったらあってもおかしくないなあというギリギリのところを狙っていて面白い。また、いちばん小説のメインとなる出来事をめぐって主人公が、2、3秒の余裕もなく一瞬のうちに人生の分かれ道を通過してしまうことがある、というその感慨にもなんか説得力が感じられた。
ところで、どうでも良いことかもしれないが、モンクみたいな人はあまりに特殊なんであって、通常はテクニックのないところにイマジネーションなぞいくらあったところで、クソの役にも立たない。ならばせめてオスカーピーターソン並みのテクニックがあるほうがはるかにマシなのだ。