オモロない

『雪の夜ばなし』辻井喬

期待していなかったが思ったとおり。樺太で集団自決したと思われていた女性が実は生きていてその人がいまやっと明かす己の人生、みたいな内容で、イントロではその人が語ったテープがどうのこうのともったいぶった小説的仕掛けがなされているが、この程度の…

『光(新連作シリーズ第一話)』長嶋有

光というのは山小屋に光ファイバーをひくその「光」だった。山小屋みたいなところでまでいってスマートフォンをいじったりしているところが面白みなんだろうか?記憶に残らないというほどではないが、感慨もとくになくて何もこれ以上書けない。

『タランチュラ』松本圭二

主人公は、自分がなんとしても詩人であることに異様に拘っていて、それがいくども繰り返されて、その拘りの滑稽さが、いまどきこんな人がいるんだというのが面白さなんだ、といわれればそうかもしれないが、いっぽうでこれだけ繰り返されるのだから真剣なと…

『震災はあなたの〈何〉を変えましたか?震災後、あなたは〈何〉を読みましたか?』

松浦理英子のコメントに、え、と思ったのと、阿部和重、田中慎弥のコメントが印象に残ったくらい。

『夢の葬送』佐藤友哉

放射性物質が主人公の短編。先日の作品にくらべ、いまひとつひねりがないし、現実に負けているように思う。勝とうとなんて思ってないだろうが。

『昼田とハッコウ』山崎ナオコーラ

まさかハッコウが結婚して終わりとは。いやいや、少しも残念ではないのだが。 たぶんこの作品の意図というか、なにが書きたいか、なにが動かしているかが私にはさっぱりつかめていないから、この終わりも分からないのだろう。まさか、人と人が繋がるって素晴…

『水の音しかしない』山下澄人

前半のとくに面白くも、かといって読み辛くもない不条理劇を漫然と読んでいると、なんと震災関連でした。人がいなくなって悲しいよという感傷めいたものはなんとなく伝わるが、で何なの?て感じしかしない。 もしかしたらあの日から何かが変わってしまったみ…

『八月は緑の国』木村紅美

まさかとは思うがこの小説、日ごろから故郷の親とは頻繁に連絡をとったりして、肉親同士の絆は大切にしましょうね、とかそんなことを言いたいわけではないよね、と、聞くまでもなくそんなことはないだろうということを念のため確認したくなるのは、そういう…

『ある晴れた日に』稲葉真弓

しつこくこの半島ものを読ませていただいているが、興味をひかれるどころか、そこでの生活を良さげだなあと感じたことすらない。だからうらやましくもないのに、なんか余裕のあるひとはいいね、とかときどき思ってしまう所が私の性根の腐ったところ。でも、…

『双頭の船』池澤夏樹

第一回からもうヒューマニズムを感じさせる。もちろん、つまらなそう、という意味。

『不在』筒井康隆

申し訳ないが(と大御所っぽいのでつい謝ってしまうが)、筒井康隆のさいきんの小説で面白いと思ったことがない。 ばかりでなく何を書きたいのかが殆ど伝わって来ず、震災奇譚とあるが、この作品のどこに「震災」があるのかが、分からない。世界が女性だけに…

『創る人52人の2011年日記リレー』

ちょい昔の山城むつみ氏の隔月連載が載っている号を除けば、殆ど読み返さないし家も狭いので、大部分捨ててしまっている「新潮」だから、100年保存とうたわれているこの号も100年どころか我が家では2年も保存しないだろう。飴屋法水磯崎新野田秀樹都…

『しらふで生きる方法』桜井鈴茂

題名のとおり。なんのヒネリもなく、アルコール中毒を題材にした作品だ。で、このヒネリのなさに見られるがごとく、志には生真面目なものを感じるのだけれど、いかんせん、アル中にいたったいきさつにせよ、その途上での修羅場にせよ、立ち直りの過程にせよ…

『ホサナ』町田康

内容も面白くなければ、文章も面白くない。いぜんは内容はともかくも文章では楽しませてくれたものだが、少し趣旨がえしたのかもしれない。わざと単調な感じを狙っているような、少しだけいつもと違う雰囲気。ともあれ、あまり期待できそうもない。

『チェーホフの学校』黒川創

今までの連作のなかでは、もっとも何が書きたいのかつかみ辛かった小説。そもそもチェーホフをよく知らない人が読んでも分からないものだったのか。 それとも子どもたちが日常的にガイガーカウンターをもって生活している光景をとくに異常とも悲劇とも思えな…

『鬼っ子』よしもとばなな

こんなときでも平気で悪口書いちゃう私も鬼のようだが、基本、オカルト話。霊を封じるだとかなんとか。風水? 懐疑のない世界は、気持ちが悪い。世界は繋がっていて、とかよく小説内に出てくるけど、私はつながりたくないので除外してください。

『ベアマン』池澤夏樹

話が格別面白くもなければ、何を書こうとしたかもさっぱり掴めない。震災のなにか?

『迷宮』中村文則

前にこの作家のものを読んだときはサスペンス風なところがあったけど、今回は密室殺人ですと。どういう意図があるんだろう。退屈な主題に飽きさせないように読者を引っ張るものとして導入? たまたまビデオ装置に詳しい人と奥さんが親しかったとか驚くような…

『リボルバー8』中山智幸

相変わらず実感を伴うこともなく、かといって面白みもない比喩が散見されて読む手を思わず止めさせるが、ここまでくると、これはもう一つのスタイルであり、作者がこういうところにこそ書く楽しみを持っているのだろう。文句をいっても仕方あるまい。 中年に…

『土産』松井周

最初はとうもろこしかなんかの擬人化かと思ったけど、とにかく何が書きたいのか最後までさっぱり掴めない。私の読解力と感受性では歯が立ちません。 このわけの分からない生物が二体いて、ふらふらあてどなく歩くだけの話で、二体の間で交わされる会話の内容…

『二年前のこと』中村文則

読んだそばから忘却だったので今めくりかえしてみたら、ある作家の感傷が書いてあるだけのようだ。

『エイを探しに』稲葉真弓

半島の別荘地であれこれする例のアレ。さぞやいい所なんだろうが、なんの興味もないし、どうも生きている人間の欲望がぎらついていているせいなのか、昔栄えた頃のその地方について語っていても、不思議と何かの感慨を呼び起こすこともない。こういうのもあ…

『南寺』チョン・ミギョン

2000年代に入ってからの先進国はどこも似たり寄ったりの経済状況(好況といわれても職はなし、不況ではさらになし。それと、新聞雑誌、本やCDなどのメデイア不況)だと思うけど、もはや韓国らしさは殆ど感じられない、そのまま日本の中小企業の話とし…

『餌』キム・イソル

たんなる釣り名人が女性を何人も監禁していてひょっとしたら釣りの餌にも?という強烈な内容の小説で、こういう内容で途中でウンザリさせずに読ませるんだから技術はあるんだろうけれど・・・・・・。この手の悪は、これはもう"近い過去はより遠い"、そのものでは…

『スリーナインで大往生』長嶋有

いぜん同様の趣向の作品を書いていて、その続きという作者自身の言及で思い出し、ここでの評価を見てみたら[面白い]だった。しかし今回は・・・・・・。 これが震災によって変わったということ?(まあ、そんな事は多分ないだろう。) 今一度前作を読み返すような…

『恋する原発』高橋源一郎

題名はすごく良い気がしたんだけどなあ。さいきんはまともな評論とか新聞に書いていたりとその手の活動も目立つせいか、こういうスタイルにどうも無理を感じるんだよなあ。CFNMの、なんとなくこれは日本的発展型なのかなと思わせるセンズリ見せがネタと…

『きなりの雲』石田千

芥川賞候補にまでなってしまった作品が思いのほか面白かったので、その作家が群像に書いたとなればつい期待してしまうのだが、残念な出来。公正にいうなら、出来という言葉で云々するのは間違っているのかもしれないけれど。というのは、会話を地の文のなか…

『お神さん』太田靖久

新潮新人賞ではそれだけで終わらず二作目が載るだけでもなかなかすごい事なので、歓迎したい気持ちもあるが、そういう事情を知らずはじめてこれを読んだ人にとってはどうなんだろうとも思ったりする。文章も悪くないし展開もよく考えられているようにみえる…

『持ち重りする薔薇の花』丸谷才一

さすがに名前だけは知っていたけど、小説作品を読むのは初めて。あるクラシックのカルテットと懇意にしていた財界大物男性が、そのカルテットの過去をメインにそれに絡めて自分の過去を語る、みたいな内容の作品。とくにこれ、語り自体に面白さがあるわけで…

『ある一日』いしいしんじ

とくにひどいとか引っかかる記述だな、というのは無い。だがしかし退屈極まる。(ってこの表現は、似たようなこと間宮緑作品のときも言ったか。) まさに題名どおりある一日なんだが、この出来事の量でこの長さはきついです。 ある夫婦−自然分娩での出産を行…