2012-01-24から1日間の記事一覧

『批評時空間』佐々木敦

すべてを読んだわけではないが、途中、2000年に入って音楽がなぜ詰まらなくなったかについて正直に語っているところがなかなか興味深い。自分の側ではなく音楽の側にその責があるとするところなど、批評家としては潔い内容だ。 だがその原因については、…

『泣く男』黒川創

今回はむかしから核に疑問をもってきた人物という、事故が起こったあとに描くにしてはやや都合が良い人物がでてきて、やや退屈気味。かといって、むろんこういう人物が実際に皆無だったわけではないし、日本への原爆投下が実験という側面があったことも否定…

『天気』辻原登

電車の切符に記載された時間の取り違えハプニングを導入部にもってきて、読者を引っ張り込む手腕はさすがとしかいいようがない。

『ダウンタウンへ繰り出そう』高橋源一郎

震災を期に、というか、原発事故を期に「新潮」に高橋が書いたもののなかでは一番何かを感じさせ、考えさせるものだった。 たとえば事故以前にだって「事故」はあったのに見ようとしてこなかったことについて。あるいは、いまの汚染をめぐる「分断」状況につ…

『南寺』チョン・ミギョン

2000年代に入ってからの先進国はどこも似たり寄ったりの経済状況(好況といわれても職はなし、不況ではさらになし。それと、新聞雑誌、本やCDなどのメデイア不況)だと思うけど、もはや韓国らしさは殆ど感じられない、そのまま日本の中小企業の話とし…

『ある法会』金仁順

なぜかしら心に残る小説。現代中国で、仏教にすがるようにして生きる、一定以上の所得のある人々を描いた小説なのだが、短い小説でたいした筋があるわけでもないのに、おなじ人間の息吹をいちばんに感じた。 さまざまな光景の処理のしかたが現代の日本の小説…

『Geronimo-E, KIA』阿部和重

読んで暫くして、ああこれはあのひとを殺した事件についてのことだなとすぐに気づく。裁判もなにもせず、いや裁判どころか、他国の領土内でというあからさまな主権侵害をしつつ処刑するという、狂っているとしか言いようのないあの出来事。それほど国際的に…

『餌』キム・イソル

たんなる釣り名人が女性を何人も監禁していてひょっとしたら釣りの餌にも?という強烈な内容の小説で、こういう内容で途中でウンザリさせずに読ませるんだから技術はあるんだろうけれど・・・・・・。この手の悪は、これはもう"近い過去はより遠い"、そのものでは…

『小説二題』莫言

共産主義まっただなかの時代と、成功者と敗者の落差があまりに大きくなった現代の、そのあまりの落差のなかを、それでも淡々と渡ってきた人々のたくましさが読みながら感じられて、そういう意味での(例えばドキュメンタリーを見るような意味での)興味深さ…

『ヒグマの静かな海』津島佑子

今回の震災でTVに映し出されたある被害者の映像から、主人公は、自分が若い頃になくなった「ヒグマ」というあだ名の年上の男性のことを思い出す。その男性は自ら命を絶ったのだが、なぜそうしたのかが分からないこと、どうあがいても手が届きそうもないも…

『文學アジア3×2×4 第四回「喪失」篇』

今回は阿部和重のが出色で、これだけで面白く、もとがとれた感じ。外国勢は平均的に良かった感じかな。いつも韓国勢に厳しいみたいだけど、偏見なんて全くありませんからね、言うまでもなく。ハンリュウドラマもケーポップも知らないでしょ興味ないでしょ、…

『新潮』 2011.12 読切作品ほか

先日賞味期限を二年くらい過ぎたシチューの素を使ったら、普通に食べれました。(といっても、主にパスタソースになるのですが。) と書いてふと思ったのですが、野菜をスーパーなどで買うとき、賞味期限なんか表示されていませんね。野菜については、肉や魚…