『批評時空間』佐々木敦

すべてを読んだわけではないが、途中、2000年に入って音楽がなぜ詰まらなくなったかについて正直に語っているところがなかなか興味深い。自分の側ではなく音楽の側にその責があるとするところなど、批評家としては潔い内容だ。
だがその原因については、インターネットがどうのこうの書いていて、たしかにネットによって強烈なダンピングが起こって資本が徐々に縮小再生産となっていったことの影響が非常に大きいのは間違いのないところだが、私に言わせれば真なる原因は、ごくごく単純で、音楽はやり尽くしたということに尽きると思う。ジャズなんて40年位前に終わっているんだから、ロックやブラックがいくらあれこれ順列をいじったり第三世界のリズムを持ってきたりしたところで、音的には終わるのは分かっていたことではないか。たぶんロックもプログレあたりでいちど終わって、パンクという反動はあったものの、あとはブラックからの収穫を終えたら終わってしまった。ブラックもヒップホップというメロディを重視しないところまでいきついたら後は何もなく、実際にはディスコ直前あたりで終わっているのではないか。