2012-02-24から1日間の記事一覧

『道連れ』北野道夫

ローカル線のなかで、たまたま逃げた女をそれとなく探し続けている男と、男から逃げてきた女が、ななめ向かい合わせに座る。そして、この男と女が交互に、それぞれの主観で語るという小説なのだが、男のほうのパートでは、いま目の前にいる女と、男が探して…

『ダイヤモンドブレード』吉原清隆

ある定年を終えた男性が過去の自分を悔いる話。ちなみに「ダイヤモンドブレード」というのは、アスファルトを刻む機械で、きっと誰もが目にするか少なくともその作業音は耳にしたことがあるだろう。単純に男が仕事で使っていたのがそのダイヤモンドブレード…

『リボルバー8』中山智幸

相変わらず実感を伴うこともなく、かといって面白みもない比喩が散見されて読む手を思わず止めさせるが、ここまでくると、これはもう一つのスタイルであり、作者がこういうところにこそ書く楽しみを持っているのだろう。文句をいっても仕方あるまい。 中年に…

『光線』村田喜代子

さいきん「新潮」に連載されている遊女のやつはさっぱり面白くないので最近はもう殆ど流し読みなのだが、この作品はつい引き込まれた。自分が入院経験がある影響もあるかもしれないが、こういう"病もの"はつい読んでしまう。(まえに一度書いたかもしれない…

『文學界』 2011.10 読切作品

むかし山手通りを自転車で走っていて、外国人の方に目黒駅はどこかと問われ、つい目と鼻の先にある中目黒の駅を教えてしまったことを未だに覚えています。 べつに悪気があったわけではないんですけど、坂の上にちゃんと目黒駅があることは知っていてそのあと…