2012-01-25から1日間の記事一覧

『緊急特別企画 恋せよ原発』佐藤友哉

いつにも増して力が入っているように感じられたので、全部を理解したとは言いがたいかもしれないが少し書いておく。まず、戦後と震災後(原発事故後)は何かが決定的に違うのではないか、という点については、賛意を覚える。とくに、同じ11日に起きたから…

『土産』松井周

最初はとうもろこしかなんかの擬人化かと思ったけど、とにかく何が書きたいのか最後までさっぱり掴めない。私の読解力と感受性では歯が立ちません。 このわけの分からない生物が二体いて、ふらふらあてどなく歩くだけの話で、二体の間で交わされる会話の内容…

『今宵ダンスとともに』墨谷渉

この号の群像でいちばんの読み応え。もっと注目されていいのになあ、この作家。 すばるでデビューしたときにはどちらかといえば肉体的にがっしりした女性がでてきたりして、フィジカルなマゾヒズムを追い求める感じだったし、一方の要素では、数値化という要…

『ハリケーン』エナ・ルシーア・ポルテラ 久野量一訳

キューバというアメリカに滅茶苦茶近いのに社会主義国である国の置かれた状況、CNN見ていたりとか、亡命人から送られてくるお金だけで働かずにやっていける人もいるのだ、とかいうことがある程度わかるが、それ以上の感想はない。

『赤いリボン』ジョージ・ソーンダーズ 岸本佐知子訳

「正しさ」、とくに社会的な運動のそれ、の恐ろしさを教えてくれる小説。この小説のなかに、いま現実にあちらこちらで起こっていること、あるいは過去におこってきたことが凝縮されて描かれている。これを止めるのは容易ではない。なぜというならば、正しさ…

『二年前のこと』中村文則

読んだそばから忘却だったので今めくりかえしてみたら、ある作家の感傷が書いてあるだけのようだ。

『テンモウカイカイソニシテモラサズ』長野まゆみ

善悪の区別もまだつかないのに知恵だけは大人以上に働く、天才型の特異少年を描いたはなし。なんかありがち。でも、読みやすいし上手い。ただ、あえていうなら、こういうこなれたものは群像以外の方がしっくりくる。

『街宣車のある風景』高村薫

この特徴的な文体!私はこれだけで嬉しくなる。そして、この空疎な「戦後日本」の光景をいまふたたび描いたということは、間違いなく震災後の小説なのだ、と思う。

『問題の解決』岡田利規

以前に載った短編の別テイクのようなものだ、という注釈が最後になされているが、今回の作品のより洗練されて読めるのは、読む私が変わったせいなんだろうか。「私」が一人称視点で自分自身をかたるごく普通の小説の部分と、その視点がいきなり神視点になっ…

『エイを探しに』稲葉真弓

半島の別荘地であれこれする例のアレ。さぞやいい所なんだろうが、なんの興味もないし、どうも生きている人間の欲望がぎらついていているせいなのか、昔栄えた頃のその地方について語っていても、不思議と何かの感慨を呼び起こすこともない。こういうのもあ…

『大聖堂』池澤夏樹

あの日(3月11日)できなかったことをやり直す話。死者をただしく弔うはなしで、そつなくまとまっているがこれといった感想がない。あまり良くないことだとは思うが、あの日いらい、私たちの多くが弔うことの出来ない死者にばかりこだわってしまっている…

『群像』 2011.12 読切作品

最近もっとも悲しかったのは、バイクで家に帰る途中で、スーパーの惣菜コーナーで買ったジャンボメンチカツを落としたことです。 少し前からネットのニュースとかブログで、「いいね」というボタンがあったりしますが、良いも悪いも示しようがない単なるニュ…