『緊急特別企画 恋せよ原発』佐藤友哉

いつにも増して力が入っているように感じられたので、全部を理解したとは言いがたいかもしれないが少し書いておく。まず、戦後と震災後(原発事故後)は何かが決定的に違うのではないか、という点については、賛意を覚える。とくに、同じ11日に起きたからといって「9・11」と並び立てて論じるようなモノを論外と言い切ったのには、拍手喝さいである。(そういうひと居ましたよねえ。)
そして、それゆえに、戦後文学を論ずるというこの企画については、これまで通りのやり方で続けるべきで、このたびの震災を絡めて語らない、とする。これも論理的には確かに正しい。
ただ、「戦後」の結び付け方として、戦後こうだったから震災後もこうだ、というような並列的教訓的結び付け方ではなく、戦後を経ても解決してこなかったことの矛盾が震災によって顕になったという結び付け方は、なんとか佐藤氏に許してもらいたいなあ、と思う。で更に、つぎのようなプレッシャーになるようなことを言うのも。
つまり戦後の処し方によって震災後を処するというのは、またふたたび間違うということになりかねないのではないか、ということだ。よって、むしろこの戦後文学を再検討するという企画の重要性は増していて、結び付けたくなくても結びつくというのが私の考えだ。なぜなら、わたしたちの戦後(の処し方)になにかしら問題があったとするならば、戦後文学のどこかにその端緒が顔を覗かせていておかしくないからだ。あるいは、戦後文学への当時の受け止め方に。
この企画が載っている号についてはいっさい処分していないので、またいつか再読したいと思う。