『八月は緑の国』木村紅美

まさかとは思うがこの小説、日ごろから故郷の親とは頻繁に連絡をとったりして、肉親同士の絆は大切にしましょうね、とかそんなことを言いたいわけではないよね、と、聞くまでもなくそんなことはないだろうということを念のため確認したくなるのは、そういう教訓を除くとすると、いったい何が書きたかったのかがさっぱりわからないからだ。
女性二人が交互に語るのだが年長のほうの女性がとにかく身勝手で意地が悪く、こんな人物が片方の主人公であることが読んでいて不愉快になるばかりで、ラストでいくらこの人物が懲悪されようと溜飲は下がらない。
また、謎で小説を引っ張るのはほんらい評価できることなのだが、ここまで非リアリズムで決着されると逆効果かもしれない。