『望みの彼方』喜多ふあり

長いわ。主人公のひとりよがりが全くどうしようもなく、切実さも感じず、したがって感情移入もできず。もちろん、こういう人物がいたっていいし、それで小説書いてもいいんだけど、ここまでの長さにつき合わされるともうウンザリだ。この、友達以上恋人未満と安易な形容をして片付けたくなるような女性との関係も苦手。まあ、これだって、若者なんだから自分の都合の良いように考えがちだと許容はできなくはないものの。
評価できるのは、自分の正体がばれているのかそうでないのか、といった先へ引っ張る要素がきちんとあるところ。だから小説の出来そのものが殊更悪いとも思えないんだけど、もしかしたら、きっと、小説の出来そのもの以上に、何か主人公のなかに倫理的なものを感じ取れないと私は駄目なんだろうな。