『随時見学可』大竹昭子

まず言いたいのが、情景の描写がいまいち分かりづらいこと。主人公が見ている光景が構図的にどんなものなのか分かりづらい場面がある。そこを読者にはっきり想像させることこそポイントと思えるのだが。
話としては、小遣いで都心に(激安とはいえ)別宅のマンションを借りることが出来るような裕福なサラリーマンの話で、その部分を読んだときになんだかなーとなってしまった。小遣いで不動産とはねえ・・。勝ち組でも比較的若い人がそういう事するんなら少しは分かるんだけども、まあそんな事はたいしたことではない。
ちょっとした妄想から始まって、ラストにかけて幻想的世界へ入っていくのは、いかにも純文学的だが、シャツについた血とか古い硬貨などの謎を、思わせぶりに登場させておきながら放置。
著者はノンフィクションを多く書いているみたいだが、より文学作品として他と区別しようとしてこんな事になってるのか。こんな形の中途半端さを、文学的な非決定だなんて思ったりしてはいないか。
ヘタするとこういう作品は、純文学嫌いを増やしかねないと思う。