『スケネクタディ』新元良一

自分の青春時代が変わってしまったことを感傷的に描くだけの内容で、メロドラマにもならない。
しかも不治の病の少年との交歓まで描くのだから、どこまでがフィクションなのか分からないが反則的でもある。事実ならば仕方ないのだろうが。
対象との距離の取り方がどれも中途半端で、たとえば、寡婦の内面をえがきたいのか、変わらない街の風景を描きたいのか、といった所がどっちつかずで、結果、どちらも何も描かれていないという印象。
あえて良い所をいえば、アメリカのある種の乾き、日本との風土の違いみたいなものは、簡潔な文体のせいもあって、少し感じられたかもしれない。