『新年』日和聡子

小説の構造としてはよく書けていると思う。それに雪景色のまばゆい白さとか、冷え込みとかも読んでいて迫ってくるものもある。
ひょっとして夢オチか?幽霊オチか?とタクシーを動物が運転する記述あたりで気づいてしまった聡明な人もいるかもしれないが、鈍い私はその時点では何のことやらではあった。
そこまで評価してそれでも乗れなかったのは、なぜに主人公が失踪した叔父についてそれほど拘るのかがさっぱりこころに「落ちて」こないからだ。そのことは何度も主人公の男の思いとして繰り返されることが逆に証明しているようなものだ。つまりそれほど何度も繰り返さないと小説の中心としての位置が危うくなってしまうからなのではないか。しかし、主人公の来歴もそれほど語られないなかで、いくら繰り返されても納得されないものは納得されない。