『おみちゆき』角田光代

ある種の人身御供的な因習として土中に生きたまま埋葬される和尚をめぐるはなしで、そういう場にまつわる雰囲気はよく捉えていると思う。
夫の伊藤たかみと一緒で、角田光代も読むのは初めてなのだが(なんという読書歴の偏り!)、伊藤たかみより全然読める。というか、この短編程度の量でこれだけ読ませた感じを持たせるのはなかなか出来ないと思う。
ほんとは命などもって2週間程度だと思うんだけど、何ヶ月も鈴の音が聞こえたと責任逃れのように訪れた夫々が思ってしまったり、主人公が土中に通じる筒からの音を獣の声と聞いたりするのもとても説得力がある。