高橋源一郎のエッセイ

今月は、昔すばるで内田樹とともにあれほど矢作俊彦に叱責されながら、中高生のような憲法談義を行っている。全く修正の気配なし。けっこう頑固で懲りない人である。
自衛隊というれっきとした軍隊を持ちながらそれを否定する憲法を持つという矛盾状態を、だからこそいいんだみたいに書いている。で、根拠は?
戦後それでうまくやってきたから、だと。
「幼児洗礼」だのなんだのと書いてはいるが、凡そ観念的な言葉の問題としか思えず、つまりなんとでも言えるわけで、私に言わせれば、そういう軍隊と平和憲法の二重性こそが、昨今話題になってる本音と建前の「偽」体質を日本人に植え付けるのに貢献しているし、また、カネや燃料などで今まで散々、十分、「人殺し」に参加しておきながらまるで手を汚していないかごとくに感じている汚さを日本人に植え付けるのにも貢献しているだろう。
そんな状況で、経済立国として成功してきたからいいんだなんて、そんなのは、アメリカの傘の下で、例えばベトナムなどのときにはしっかり基地として機能しておきながら出来た話で、自国民が死ななければそれでいいんだ的感覚は、私には理解不能だ。