『燃える家』田中慎弥

なんでも大型新連載らしい。前半はいかにもこれまでの田中慎弥らしい、少年と父親との思わせぶりな関係の話で一通り退屈させられたが、後半では女教師だの、湾岸戦争について語る保守政治家だのが出てきて、あまりらしくない。楽しみとまでは行かないが、どう話が転がっていくのか、広げた風呂敷をどう畳むのか、さっぱり予想がつかない。
しかしこの作家は、昨今の日本の文学者にありがちな、私小説的な世界から敢えて出ない、開き直り的なというか、物語拒否なやりかたと違って、全く実際の田中慎弥という人物から流出したとは思えないような人物も、想像力をもって構築しようとしていて、その点は古き良き文学という感じがしないでもない。私自身、古き良き文学なんて殆ど知らんのだが、例えば、太宰とかがしばしば女性を主人公に据えたりしたようなのを思い出させる。