『「生」の日ばかり』秋山駿

あくまで連載を除けばだけれど、この号の群像でいちばん面白かったのはここ。(あ、これも連載か。)たしかに私もあの芥川賞受賞作の良さが理解できなかったひとりではあるけど、秋山がここまで読めていないとは驚く。たとえば、なぜ「気のせいか・・・・・・。」という一文が必要なのか、と秋山は躓くが、これはたんに教授の内省を簡潔に挿入しただけで、「別のことを学生達がしてるのではと教授は感じ振り向くが、彼女達に悠然と微笑み返されて、その疑問は気のせいかと思った」、それだけのことではないか。
しかし、いっけん躓くところではないと思えるこういう所もまたこの小説の特徴なのかもしれない。こういうところに違和感を持たずに読んで面白くないと判断した私も問題で、秋山が感じたようなこの違和感が反転して面白さと感じ取れる人こそが、あの小説の正当な評価者なんだろう。小川洋子との対談で、赤染という人がややどうでも良い人になりつつあるから、別にいいんだけどね。