『ファントム、クォンタム(序章)』東 浩紀

予想以上に面白いんですけど。適度に理屈っぽいし、何よりハナシを書こうとしていることに好感がもてる。
全体の大筋はいわゆるごくごく近い未来のことを描いたSF的内容なんだけど、今のWEBコミュニケーションについて問題意識のある人にとってはWipipediaが自動的に改変されたりとか、2チャンのニュースサイトやミクシィはてなが出てくるあたりなどツボは押さえられている感じ。
ただ中心人物の准教授の妻が、児童文学〜伝記作家〜教育評論家〜宗教団体主宰者?になっていく過程は、ちょっと先を急ぎすぎた感もあるが。
それはそれとして例によってディテールも楽しめる。「浅谷公人」(だったっけ?)なる人物がコメントで出てきたり、また、平行世界ではチベットが独立していたり、と、平行世界の政治利用が小説のテーマでありながら、この小説じたいがちょっと政治的だ。