『ばかもの』絲山秋子

なんかこの作品がぐんぐん自分のなかで比重を増している。つまり面白い。アル中の主人公が落ちるところまで落ちていくところ、なんとか少し回復してきてでもまだ反省しきれていない所など、いちど孤立感を経験したことが無いととても書けないだろ、と思うってしまうくらいとてもリアルに感じるし、周りの登場人物の表情も多彩だ。なかでも昔付き合ってた彼女の母親の雰囲気がとても良い。前に読んだ『エスケイプ/アブセント』の登場人物はみな薄いというか軽いというか、という印象だったのだが、こうも私のなかで絲山秋子の評価が変わるとは。
あと、北関東のちょっと立ち行かなくなってる感じの雰囲気がよく出ている気もする。
それにしても群像では相変わらず鹿島田真希が絶好調だし、このふたりともが最初私のなかで低評価だったんだけど、見る目がないというか、私がきっと文学慣れしてきたんだろうな。
文学プロパーでない人が文学を読んだら、みたいなのがこのブログのテーマ的ものでもあったのだが、なんかそれもすっかり薄れてしまった感じ。