『烏有此譚』円城塔

なんとかベースボール以降まったく評価していないこの作家。この作品も×。木村紅美氏のように評価が覆る瞬間はまったくなし。
というかこの退屈さに最後まで付き合った自分を誉めてあげたい(実は2度ほど途中で寝そうになってその度家事をしてしのいだ)。
対位法的なくどいアフォリズム的文章(AはBとなるが、BだからAを経ているとはかぎらない、とか、AはBなのだから、A´もまたB´でいいのだ、みたいな)が延々繰り返されるが、何が残るわけでもない。何が残るのでもなければ、せめて読んでいる間だけでも楽しめるものであって欲しいが、それもない。「穴」や「灰」が何を指しているのかをはっきりとさせず、読者が自由に解釈したり、解釈に委ねたりできれば面白いのだろうが、あまりにもお話がなく思弁があるのみで、生硬過ぎてついていけず、そういう気力も薄れるんだよね。なんか、生きている限りこの世界を総合的に把握せねばならない、みたいな病のような生硬さを感じるのだ。
デビューから唯一良くなったとすれば、アメリカの翻訳小説的な格好つけた会話が多少は少なくなったこと。
それでもまだ残ってるけれど。この種の格好よさを自分の中から追い出さないかぎりこの作家、私には不要かな。