『四方田犬彦の月に吠える〜第23回"赤軍の娘〜"』

いつもわりと楽しみにしている連載なのだが、今回の冒頭で"後続世代の社会学官僚"と揶揄しているのは小熊英二氏の事なんだろうか。でないにしても、少し違和感のある四方田氏の言い方ではあった。
というのは、全共闘世代の人たちもまたかつてそのようにして、特権的に戦争体験を語る人々に対峙したのではないかと思うから。「東亜解放」という神話を、それってたんなる「日帝の侵略行為」でしょと脱神話化したのは、それはそれで全く意義がないとはいえなかったのではないか。
だとすれば、この冒頭は、一種の自己否定にもなりかねないものとなる危険性がある。
しかも全共闘というブルドーザーは、その声があまりに大きかったぶん、「君らに言っても分かるまい」という戦中世代の沈黙を招いてしまったという側面も指摘されるが、それに比すれば、小熊氏の著作程度は大きさとしてもまったくの許容範囲ではないだろうか。