『あまりに野蛮な』最終回 津島祐子

現代と占領中を往ったり来たりして連載としては非常に読みにくかったこの連載がいきなり最終回。前月号ではそんな予告は無かったはずなのに、何か事情でもあったのだろうか。
内容もどちらかといえば喰い足りず、リーリーの子供が死んだ理由も結局交通事故であって、明かされてみればとくに複雑な事情があったわけでもなし。肝心の「野蛮」にしても、一番野蛮なのかなと思っていた日本の占領の野蛮さは中心になく、そもそも台湾にあっては中国本土と異なり、当時それほど野蛮であったかどうか微妙でもある。(それでも少数民族の問題は変わらず残るわけで、その場合、漢人もまた野蛮という事になるのだろうか。)
最後のほうになると、動物たちがいろいろ登場して、戦争などの争いごとで自然を荒らした、というテーマとしては何とも素朴な「野蛮さ」が中心なのかなという気もするが、結局野蛮として一番心に残ったのは、こんな暑いところまで勢力を拡大しようとしたことのその行為の野蛮さではなく、気候の野蛮さだった。それが原因で子供が亡くなったのが一番の躓きなわけで。
印象としては、現代の台湾の描写はわりと生き生きとしているように見えた。リーリーとヤンさんの微妙な関係が良い。台湾のとんでもない暑さも、読んでいながら充分に肌で感じることができた。だからこそ喰い足りないと思ってしまったのかもしれない。現代側の話の方が読んでいて楽しかったのは確か。ミーチャの側の話は、あまりにミーチャの主観ばかりであって陰鬱さばかりが印象に残った。例えば明彦の心が離れてしまったことに関して、明彦側の心情がいまいち見えてこない。世界が非常に狭い感じで、それはミーチャが内向的であるから仕方のないことなのだが、それならそれで、もっと逆に思いっきり少数民族や台湾の動物たちへの関心を出しても良かったかもしれない。このへんの関わりが、台湾にはこういう存在もいますよ的で、つまり単なるちょっとしたネタ扱いになってしまっているようで、何ともこちらの期待に反して中途半端であった。これなら全く関心は内地にしかない、というくらいのほうが自然ではなかったのか、とか考えてしまう。


といろいろ書いたが楽しめる場面も多かったということで、津島祐子氏に感謝したい。