『宿屋めぐり』町田康

さいきん飽きてきてたので終わるにはいいタイミング。これまでの連載のなかで、正しい生き方とは何かとか、世間の間違った生き方を告発するような描写もたまに見られて、批評的な小説ではあったが、終わってみるとなんかそれも中途半端な印象は否定できない。文章は自在で飽きさせないが、それもただ自在だというだけで、ファンはそれでよいのかもしれないが、外部へ向けてどうかというと、実際どうなのだろうか。
飽きさせない自在な文章だけで、そういう事をできる人は少ないし評価してよいのではないか、と言われればそうかもしれないが、何度も読む気はしない。とくに意義があるとも思えない。
この小説のメーンテーマはどうも宿屋めぐりという題名がダイレクトに表現していて、つまり結局は人生誰の人生であっても大差の無いことを反復してるのだ、その時々で良い宿屋で良い食事がとれればそれで充分じゃん、みたいな終わり方をする。
ニーチェ的なのだろうか、これは。
終わりなき「反復」をどれだけ楽しめることができるか。それに対してこの小説は答えを与えていない。主人公もその事について何も説得もされていないし納得していない。ただその反復を止めるやめないだのの問答から覚めたとき、彼は結局また反復を始める。彼のその姿には一定の説得力は確かにある。


町田さんにはご苦労様ですと言いたい。たしか休載もなかったはず。