『しげのり』吉原清隆

幼いころの長男の宿命でもあるのだが、弟ばかり可愛がられてと思いが募り、扇風機を寝てる間中点け放す事で弟を死なそうとする兄の話。どのように弟がワルだったかで持ち出される例のなかでちょっと冗長でついていけない部分があったが、それ以外に不満な点はほとんどない。
扇風機をつけっぱなしにする、というのが面白い。たしかに幼い頃そんな話があった。体が冷えて心臓が麻痺してしまうのだそうだ。心臓が麻痺するくらい寒ければ寝ていられないと思うのだけど、雪山遭難とかでは寝たままが恐いというし、実際どうなのだろう。
結局何事もなくその企みすら誰にも知られること無かったのだが、こういうふうに弟のことを考えてきた兄が、成人した後、実家に寄り付かなくなるというのは如何にもありそうで、実体験に基いているのでなければ、なかなか作者は想像力があるという事になる。


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