『主題歌』柴崎友香

よほど印象が薄かったせいかあまり内容は覚えていないが、前回読んだ柴崎作品である大阪の昔の写真を集める女性のはなしと、基本的にはまったく変わらない。
というかあの作品の方がまだストーリーがあったのではないか。
結局、若い女性の日常を切り取ってみました、というだけで、毒も皮肉もなんにもなし。
この何にもないこと自体も、ひとつの批評的姿勢ということもできるが、そこまで深読みする必要は感じない。
会話文はわりと練られている印象で澱みなく最後まで読めるし、「美しいかわいい女性」を現実の人やら女優やらをあちこち探すことに楽しみを覚える女性の話という、あまり他に例のない趣向を織り込んでいるので、ワンランク上げてオモロないにしたが、気分としては[紙の無駄]。
まあ、こういうものを面白いと思う人がいるとして、それを全く理解できないわけでもないところなんかも、紙の無駄、にしなかった理由になるかも。今までこのブログで紙の無駄にした作品は、どれもそれが作品として成立していることじたい、不可解だったもんなあ。
ひとりひとりの女性への内面もあえて突っ込まず、というか内面の存在も窺わせないような描写で、キャラの現実感というか存在感はあるが、現実の付き合いの薄さそのままを小説にしました、という感じ。
女の子集めたパーティにしても、楽しげでありながら、どこか「お付き合い」めいていて、かといってそれによる悲しさみたいなものもない。
まあそれが確信犯なのかそうでないのかなんてのは、もうどうでも良い。2作品読んで、よほど作風が変わらないかぎり付き合う作家でないことは、もうハッキリした。