2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『群像』 2007.6 連載作品など

三島賞は佐藤友哉。芥川賞と違って分かりやすいなあ。

『神器―浪漫的な航海の記録』奥泉光

先月号から続いて物語が走り出してきて、内務省の内偵や、死んだ二人の所沢つながりなど、新たな謎も提出されまったくこれも目が離せない。 ただ飽きやすい、というか、常に新しさのある作品を書くことに一定の価値を見出すような人にとっては、それほどこの…

『太陽を曳く馬』高村薫

やっと今月で絵画論、しかも旧字体によるそれが終わりそうな展開で、こんな抽象的な絵画論、普通なら退屈してしまうところをそれでも読ませてしまうのは、作者の力の現れだろうか。

『決壊』平野啓一郎

誰もがそうじゃないかと思っていたんだろうけれど、どうやら京都で起きたバラバラ殺人の被害者は、主人公の弟くんっぽい。主人公とその弟との微妙な対立も、この小説のなかではかなり緊張感が感じられる読み応えのある部分だっただけに、それがもう終わって…

『新潮』 2007.6 いつもの連載作品など

本日5月15日といえば、三島賞の選考の日ですね。いったい何に決まるんでしょうか。あるいはもう決まってるんでしょうか。 じつはそれほど関心が無かったりして・・・

『〈鈴木少尉〉の帰還』朝倉祐弥

村に伝わる伝統的な儀式と、個人としてのイニシエーションを重ね、それを、友への呼びかけというちょっと工夫した体裁で語る作品。それだけで好感度がちょびっと上がってしまうリアリズム系である。 その体裁や、物語そのものの骨格、またエピソードとのバラ…

『無間道』星野智幸

ストーリー的にどんどん読者を引っ張っていく作品ではないので、面白い、という言い方もどうかという所もあるが、それでもこの長さでいろいろな事を感じさせてくれる作品である。ここ数ヶ月読んだ短〜中編の中では、抜けていると思う。 星野作品は初めてだが…

『すばる』2007.5

先日ぶらり出かけた先の本屋で、『すばる』の5月号を買ってしまった。 小林信彦だとか椎名誠だとか筒井康隆だとかの小説には心動かされないのに、新人っぽい人の小説が載っていると、チェックしたくなってしまうという、これはもう病気ですね。 じつは綿矢…

各6月号の目次を見て

群像は新人賞に、創作が柴崎友香と蜂飼耳。ともに作風がそのままならあまり期待できず。連載は村上龍もふくめ休載なし。GOOD。 新潮。なんと大江の短期連載だとさ。金井美恵子に中原昌也もいて読みにくそうだ。三島賞候補作発表。ふつうに考えれば佐藤友…

『観念的生活』中島義道

今回の現在とか、過去にかんする議論は、私の頭ではなかなか飲み込めない。 その結果、筆者のナルシスティックな紀行文ばかりが目立ってしまった。

著者インタビュー 西村賢太『暗渠の宿』

ちょっと性急な感じでうまく作者のキャラを出したインタビューだけど、肝心の小説は読む気がしない。 だって西村氏の言うことがイマイチ。 趣味で貧乏なんてできない、とかいうけど、小説書くだけの余裕のある貧乏なんて、やっぱホントの貧乏からみればちょ…

対談 河野多惠子×山田詠美

同じ山田との対談でも、川上弘美よりは2人の間の距離が近そうで楽しめた。川上と山田だと下手すれば2人はライバルであって、遠慮しつつみたいな雰囲気がどこか漂っていたけど。 河野多惠子が石川淳から酷な扱いを受けた話が面白い。 結局河野は、石川淳のも…

『メディアフィロソフィー』高田明典

掴みはケロロ軍曹の話。このへんはちょっといやらしいのだが、で、自由とは、とか共同体とはという話に映っていく。新しい発見、というと大げさだが、そうかなるほどそういうふうに解釈すると物事がスっと通って見えるぞ、という気分にさせてくれる箇所もあ…

『私のマルクス』佐藤優

やっぱ学生運動を扱ったところは素直に面白く読める。とくに今回は、あの高名な哲学者廣松渉が若い頃、日共の派閥闘争のなかでリンチされていたなんてエピソードもあって、飽きさせない。 戦中から戦後のある時期、一匹オオカミ的に右派を気取るひとを除けば…

『自我からの逃走――現代文学における〈私〉とは』伊藤氏貴

なかなか力の入った論考だが、笙野頼子にかんする編集者とのエピソード以外、あまり面白いとは思えず。論旨も明快だがちょっと凡庸というか刺激が足りないというか。 それでも田中和生の評論からすれば、はるかに面白いことは間違いない。

『跡弔ひて』藤沢周

剣道を趣味にしている中年とその息子との交歓を描いたはなし。いい給料もらっていそうなサラリーマンが霊に取り付かれたようになるんだから、もうちょっと影を感じさせるのかと思いきや、短編の限界というべきか、中年男性の爽やかなナルシシズムすら感じさ…

『日本橋バビロン』小林信彦

きちんと読んでいないので評価はしないでおく。物語以外の当時の世相など、日本橋がひとつの区だったころの東京都東部の様子の記述はなかなか興味深く読めた。 小林信彦は、むかしビートルズの来日を描いた小説に関することで悪い思い出があって、まともに読…

『文學界』 2007.4 と文芸誌各6月号の目次

4連休は(最後の一日を除いて)非常に良い天気でしたので、図書館で『文學界』の4月号を借りて、『すばる』の5月号も迷った末に買っておきながら、ほとんど読んでません。 それでいいんです。この季節、あの天気、お出かけする事以上に楽しいことなどあるは…

新潮新人賞、選考委員変わる

【新選考委員】は、浅田 彰/桐野夏生/福田和也/町田 康/松浦理英子、との事だが、浅田、福田、町田氏らは留任。 小川洋子と阿部和重が抜けて女性2人が入った。 松浦氏の顔を初めてみたが、とても凛々しい。コメントも力が入っている。松浦氏といえば、…

『儀式(プジャ)』中上紀

しっかりした文章の、いわゆる純文学である。 作品の全体的なトーンは暗く、主人公の女性のテンションがいつも高い。子供を取られたんだからそりゃテンションは高いだろうが、そうでない所でも息抜きというか余裕がない。 前読んだ中上の作品もアジアのどこ…

『グレート生活アドベンチャー』前田司郎

いかにも今時のフリーなダメ青年の日常を描いた話。ストーリーというほどまでのものはないが、主人公のダメっぷりの描写がなかなか面白かった。 初めて読む作家で作風も分からないし、ゲームのなかの出来事の記述で始まるため、もしやバーチャルな世界とリア…

『新潮』 2007.5

なんかいつも月が変わって、次の号が発売って頃になってから読み切り作品読んでるなー。 裏を返せば、切羽詰まるまで読む気が起らない、夏休みの課題図書じゃあるまいし、っていうのが常態で、私ってほんとに純文学好きなのかしら?