『あまりにも野蛮な』津島佑子

なんか面白いな、と感じてしまっている。意外にも。それどころか、ちょっとした感動めいたものさえ感じる所まで引き込まれながら読んでいたりするのだ。
最初の2、3回はむしろ退屈さえ感じていたんではなかったっけ?


植民地時代と現在の台湾が対照的に描かれ、その余りに違う様子が感慨深い。
あの時代を振り返るにあたっては、一般的には戦闘行為やそれに伴う悲惨さ、生命の危険を伴うようなものが中心とされがちで、それはそれで仕方ないのだけど、でも、そういうものには少し慣らされている気配がないではない。そして、その手のものに出合うと、えてして自らの政治的コンパスに従って評価するだけになってしまう。
この作品のように、あの時代をその日常から、しかも外地での日常から振り返るというのは、なかなか面白い試みだと思う。けっしてそんな試みが今まで無かったわけではないだろうけれど、私にとっては新鮮。