新人小説月評 田中弥生・松井博之

今まで一度も言及してないけど、この短評はけっこう楽しみにしてたりする。侃侃諤諤とおなじようないみで。
文芸雑誌って買うと先ず、このへんの気楽に読み飛ばせるところから読んだりするので、毎号読んでるんじゃないかな。
田中氏などは、漫然と読んでるだけではなかなか読み取れない隠された部分を引っ張り出してコメントする事も多く、この短い分量でそこまで気の効いたことをするのは、なかなか大変なんじゃないだろうか。
どうせ私と違ってロハで手に入れて読んでいるんだろうから、頑張って、とも何とも思わないけれども。
そうそう。只かそうでないかという差はあると思うな。そりゃ文学は商品であるまえに学問・芸術だろうから、作家さんとしてはこの月評や群像の鼎談などのほうが響くのかもしれないけど、金払ってる人の感想というのもちょっとした存在場所はあるんではないか、と。
私のほうがきっと誉めるときでも愛がありますよー。そしてその後もきっとより深く受け止めようと、読み取ろうとするんじゃないかなあ。(頭が悪いんで読み取れないという問題はある)
その分、逆の場合には辛く当たるという事になるのだけど。(と思ってみてみたら、紙の無駄とか書いたものは、借りたものではなく皆買ったものだった。)


ところでこの月評の面白いのは、私の評価とほとんど一致しないところ。よくぞここまで。
まあこれは金払ってるいないの差ではなく、感性とか知性の問題なのだろう。内容が短いだけに説得される部分も、抗したい部分もあまりないのだけれど、ときにちょっと強引なんじゃないの、というのがある。
5月号の田中弥生小林エリカ評で、同性愛者はプールに浮かない、というくだりがあるが、その解釈の強引さもさることながら、ただ主人公がヘンな思い込みをしてしまっているだけのことが、それほど悪く言われることなのか。