『ねぐら探し』木村紅美

これでは上質な紙芝居だな、というのが読み終わったときの最初の感想。
めでたしめでたし、で終わらないという所が違うだけで、作品の最初から最後まで、悪い奴は悪いまま、良い人は良い人のまま。
隣に越してきた人などは、まだ姿の見えないうちから、きっとこの後「良い人」として出てくるだろうな、と思ったらその通り。そんなふうに物語としてベタすぎ、というのも気になったところ。
子供の視点から書いてるから、それでいいというものでもないだろう。だいいちそれでは奥行きが無さ過ぎないか?
たとえば主人公にひどい仕打ちをし続ける人物にだって"理由"があり、それに存在という位置を与えてあげるのが文学の役割なんじゃないか、と思う。


ただ沖縄の情景や風俗の様子については、魅力的に書けていると思う。
この沖縄の部分にあるていど比重があるおかげで、肝心の問題がぶれてしまった感もあるが、とはいえ、それが決定的な退屈を感じさせなかった所でもある。
ただやはりそういった話の広がりよりは、もう少しの掘り下げ、深み、奥行きが欲しかった。
中年男性に対して主導的な役割を演じる主人公が、まさしく演技者としての自分を意識するところなどは、母親の性格を思い起こさせるものとして作者は意識的に書いているのだろうが、そこのところもなんか平板に映った。