『45文字』小池昌代

中学だかの同級生と大人になって偶然出くわして、淡い交歓をする、という小説にありがちなよく出来た話。
ニートっぽい存在も散りばめて、そういう現代小説としての目配りも行き届いているし、文章はとても読みやすい。上手いといっても良いかもしれない。
ちょっと三角関係っぽいのだが、それぞれが少しづつ人と大きく変わった性格を持ちながら、深くは描きこまない。だから暗さとか闇とかを感じない。短編だから、そこまでできるが敢えてしないで、という部分があるのかもしれないが、だとしたら短編というのはやはり何か物足りない。
ひとつ屋根の下に男女三人が生活して、性の臭いが希薄なのも、それがこの小説の狙いなのかもしれないが、現実としてはやはりありえないなあ、と思う。
もちろん狙いではなく、小池という作家が「男性」というものを描けないだけかもしれないが、現段階でそれほど悪印象をは抱かなかった。