『不意の償い』田中慎弥

(2007.12.17追記 以下の作品評は余りに主観的なので注意してください。削除してしまうとピンポンダッシュしているかのようだし、自分の恥としてこのままにしておきますが、この次に読んだ田中氏の作品はひどいものではありませんでした。また雑誌などに見る私以外の田中慎弥評は好意的なものが多いことも念のため添えておきます。)


ひとことで言えば「酷い」小説だった。妻の妊娠を機に精神的におかしくなった単純労働者の男性の話。
とにかくしっちゃかめっちゃかでまとまりのない小説。支離滅裂。
しっくり来ないメタファー。動物への変容も必然性なし。文章にもリズム感ゼロ。
常時見られている、とか、見張られているという強迫観念を抱いてしまうタイプの精神病者を一人称で描いたらこうなる、というふうにわざと支離滅裂に書いたつもりなのかもしれないが、それならそれで、逆に文章にまとまりがありすぎる。あまりに中途半端。
だいいち話の前提が、アリエネー的な、こんなどーでもいい設定の話になどかかわりたくないというもの。
幼馴染で幼い頃の約束そのままの結婚して、それぞれの両親が4人ともマンションから見える同じスーパーで働いていて、その幼馴染との初セックスの日に4人ともスーパーの火事で窒息死してしまう、というんだから。オーノー。
夫婦が4人とも同じスーパーで働くか?ふつう。
人間、そんなに閉じられた関係でいられるものではないだろう、しかも4人同時にそんなふうに存在するか?せめてひとりくらいは、違う職業か専業主婦しているだろう。
そして4人同時に死ぬのだ。
あのなー火事ですよ。夫婦4人同じ会社にいたとしても、同じような場所で働かさないって。ひとりふたり助かるか、重症か、あるいは一人だけ焼死とか、外回りしていたとか、だろう。
まったく馬鹿げている。マンガだって無いよ、こんなふざけた話は。
玄関先でいきなりセックスしたことに拘ったりとか、会話もなんか夫婦とは思えない不自然な内容だし、家から見える火事に息を吹きかけた事がじつは何かを意味していた、とか、ひとつも切実でないどうでも良い事ばっか。
読んでいて、これほど嫌な気分になるのは久しぶりだ。