『あたしのいい人』佐川光晴

以前すばるに載った『おれのおばさん』の物語られた世界を、今度は施設の中学生ではなく、その"おばさん"を主人公にした小説。予め言っておくと、私が佐川氏の小説を悪く評価することはまず無いし今回も何一つ悪感情はないのだが、この作品については、今ひとつ"おばさん"をダメ人間の側にふった描写でもよかったかもしれない。あれほど好きだったのに一回の浮気で離婚したこと、そして、その後それをずっとどう考えてきたのかということ、その元ダンナの消息が知れて自分と同じような倫理が問われる仕事をしていると知ったうえで目だった行動は控えていること、などについていまひとつクッキリしない気がする。