『野いちごを煮る』木村紅美

料理本を「見て」ジャムはホーロー鍋(別に本当はコーティングされていないアルミ鍋以外だったらステンレスでもテフロンでもOKなのだが)で作るのが良いところまで知っていながら、なんで野いちごのジャムの作り方を人に聞こうとするのかよく分からなかったが、印象としては丁寧に書かれた作品。
ただ、ハードワークに徐々に蝕まれていく正社員と、さえない派遣の私、マイペースのニートが出てくる世界は、いかにも図式的で、外から観察して書いたという感じ。いや観察だけでこれだけ書ければ、もう作家としては充分な技量としか言いようがないのだが、それでも新潮のあの小山田氏の新人賞作品を読んだ後では、誉める気はしない。派遣の人って、こんな軽くって良いのっていうくらい、けっこうモノ考えずにマイペースな人多いんだよね。というかそういう文学にならない人のほうが圧倒的多数といっていい。この作品はその上をすべっていくだけ。