『新潮』 2012.5 読切作品

相変わらず古内東子と最近はチャーリーパーカーを聴いています。この組み合わせで毎日を過ごす人ってどれくらい世にいるんでしょうか?


ジャージとか肌着とか仕事着を除いて、カジュアル着といえば殆ど古着で済ませているのですが、それはたんに安いからで、エリの形とか胴回りが太いとか他にもファッションに詳しくないのでよく分からない理由で結構綺麗なモノが異様に安くなっていたりするのです。
そんなふうに値段第一で着るものにそれほど頓着しない私が靴にだけはそこそこカネをかけるのは、安い靴はすぐダメになるし、下手すると足までダメになって、お買い得ということは殆ど全くといっていいほどないからです。もちろんある水準以上は高ければ高いほうがいいという具合にずっと比例するとも思えないし、どうせブランドとしての価値が含まれているだろうし、買ったこともないし、とりあえず一定の金額までの話なのですが。
なわけでどんなに安くても5千円以下の革靴は買わないのですが、カジュアルには何を履くか。じつは数年前までずーっとニューバランスを信奉していて、574とかあのへんの定番の奴を底がツルツルしてくると履き替えていたのですが、この歳になって開眼しています。VANSのスリッポンしかない、と。
なぜか。かがむ必要がまったくないのです。スリッパという言葉がありますが、まさしくスリッポン、スリップ、オンで、コンバースのキャンバスみたいに甲のベロ部分を引っ張り出したり、窮屈なかかとを引っ張り上げたりする必要がまったくなく、足がすっと入ってしかもきちんとホールドされるのです。衝撃吸収などの付加価値のないスニーカーとしては確かに高めだし、ユニクロでキャンバスシューズを1000円くらいで売っているのを見たことがありますが、4倍近くの値段でもそれでも私はこれで行きます。