『逆に14歳』前田司郎

文章が冗長だし練りこみが足らない箇所もある。そここそがこの小説の売りなのだろうが、何か面白みみたいなものを出そうという意図が見え隠れするしながら、少しも面白くない。これがたんに面白くない以上にしらけを増大させる。また、この冗長さの特徴のひとつである、どうでも良い自分ツッコミが果てしなく嫌だ。なぜ嫌かといえば、どうでも良いものにいちいち付き合わされたという気がしてしまうからだ。時間を無駄にされた気持ち。
だいたい年寄りというのは、むしろ結論を出すのが早いものだ。思考の流れの形が定まってしまってるからね。
こんな中学生みたいな事ばかり考えてるじいさんなんか居ないよ、というのは無論早計で、おそらく「逆に14歳」だから敢えて14歳みたいなメンタリティにして意図的に書いているのだろうけれど、思考が堂々巡りに嵌ってしまうあたりはそうであっても割り切りも早く訪れるこれは14歳ではない。たんに頭の悪い青年になってしまっている。前田司郎が以前書いた作品中に出てくる人物との違いがあまり感じられないのだ。
またある日逆から数えれば14歳と気付いたからそうしているわけではなく元からそうなのだから、どうみても14歳ではありえないそれを「逆に14歳」と認識することに何の意味があるのか。ある日そう気付いたから考えや行動を改めたというなら分かるが。
そして、例えば温泉地での様子なども行ったことがなくても書ける程度の既視感があるものでしかなく、なんらの有益な「情報」もこの小説には存在しない。唯一「ロシアンマフィア」と「ロシアンスパイ」を混同したあたりだけが面白かったが、それだけをもってこの小説を松尾スズキの小説と同レベルの[オモロない]にしてしまうのは、前田氏には申し訳ないがあまりに不公平である。