『地上で最も巨大な死骸』飯塚朝美

この題名は何かの比喩かと思ったら(まあ比喩でもあるのかもしれないけど)、そのまんま象の話だった。ここで1ポイント。
また、動物園に勤めた経験があるか余程の取材でもしないと書けないようなレベルにある事は確かで、その点は評価したいと思う。こういう「情報」がある小説は、読んでもたいして損した気分にはならない。
そう、前半は、抑制されていてそれなりに良かったと思うのだ。だが中盤から後半にもなると、純文学のカリカチュアというか。登場人物が陶酔したような現実にはありえないような会話をしだしたり、余りにも大げさな所作にはまり込んでみたりといったふうになってきて・・・・・・。とくに研修社員ともあろう者がいきなり先輩社員である主人公を嘘つき呼ばわりするところで半ば脱力し、ラストで人が獣のように叫び出すあたりになると何か可笑しさすらこみ上げてきてしまうのであった。
題材やテーマなどから考えて、もう少しリアリズムであったほうが良いと思うのだけど。光景などの描写はそのままで良いとしても少なくとも人物はもっとありえるような行動してくれないと。