福田和也の評論

堀江敏幸は川端だった、という内容でいつもより明確な論旨だなと思いつつ読み進めるとなんかへんな箇所がある。
堀江の書いた小説についての話で、現代ではあらゆるものがマスプロダクト化されているので、堀江が書いた、生産設備が「手作り」だというのはまずないから、メルヘンなんだと。
手作りってのはワンオフって事だとすれば、工作機械なんて、そんな特注のワンオフ品、作ったメーカーしかなかなかサポートできないようなものがゴロゴロしている商品分野の典型に近いものだと思うけど。
ついでにいえば、あらゆるものがマスプロダクトなんて明らかに大げさで、まあ大げさに書いて人目を引くのが評論家なのかもしれないけど、日本の工業はまだまだ町工場の職人の手作業に頼ってる部分が存在する。たとえばミリ以下の研磨とかなかなか作れない形の金型とかを、神業的なものを持ってる人が手作業でやってたりする。と記憶で言ってるが、ほぼそれに近いか同等のことが職人たちによって行われていることはまず言えるだろう。だからこそ、商工会議所だとか旧通産省だとかその手の団体が危機感を感じて、「技術の継承」だの「ものづくり」だのキャンペーンするわけで。
というわけで、堀江作品の主人公が、技術屋の友人にワンオフの生産設備の製作を依頼して手作りといっても良いくらいの独自のものを作ることは、それほど現実から離れておらずメルヘンでもなんでもない。
なんかやっぱ信用できないよなあ、福田和也、と思ってしまう。